年明け座談会 2011年Ver



ルスティン「ああ、『本編』で出番がないまま、また年が明けちまったねえ――」

シルフィード「今年もそのセリフからスタートなのね、座談会」

ルスティン「うっさいねえ! 本当に出番がなかったんだから仕方ないだろ!」

黒江「まったく。そんな後ろ向きな姿勢じゃ先が思いやられるよ。物質界の本質は『無常』。『常ならず』。いつまでも同じ状態は続かないんだ。だからほら、ハッスルハッスル」

ルスティン「ハッスルって……」

シルフィード「いくらなんでも、それは古すぎ……」

黒江「いいじゃないか。暗くなっているよりはずっと、さ。さて、それよりも、だ。あけまして――」

ミーティア「ていっ!」

黒江「のわっ!?」

ミーティア「あははっ! 『のわっ!?』だって! 『のわっ!?』だって! 効果バツグンね、必殺『膝カックン』!」

ファルカス「お前……。『マテそば』のラスボス的キャラに『膝カックン』はないと思うぞ?」

ミーティア「まあ、いいじゃない。楽しければ」

黒江「……私は、あまり楽しくなかったがね」

ミーティア「笑わせる立場の人がそれほど楽しくないのは当たり前。ラスボス的キャラだっていうのなら、笑って許しなさい」

ファルカス「なんて勝手な……。ところで、今回の座談会のメンバーはこれで全員か? だとしたら主催者は誰だ?」

黒江「私ではないよ?」

ルスティン「もちろん、アタシでもないからね?」

シルフィード「右に同じく」

ミーティア「じゃあ、誰が――」

イリスフィール(以下イリス)「あ、もう集まってるわね。今日は――っと、その前に。皆さん、あけましておめでとうございます。ほら、皆も」

ミーティア「え? あ、ああ、うん。――コホン」

全員「あけまして、おめでとうございます」

イリス「うん、魔族の皆も含めて、よくできました。で、今日はね、この血気盛ん――もとい、闘争心溢れるメンバーで、ゲームでもやろうかと思って招待したの」

ファルカス「ゲーム?」

イリス「そう、ゲーム。俗にテレビゲームと呼ばれているもので、ね」

ミーティア「テレ……? えっと、言っておくけどあたしたち、機械にはとことん疎いわよ?」

イリス「大丈夫、地球では年端もいかない子供にだってできるものをチョイスしたから。さあ、テレビの前に集まって!」

ルスティン「なんでアタシがこいつらと――」

イリス「遊ばなきゃいけないのかって? 強いていうなら、座談会だから、かしら?」

シルフィード「……まあ、いいけどね。でもやるからには本気ださせてもらうわよ?」

ミーティア「それはこっちのセリフ! 絶対負けないんだから!」

黒江「おお、いい感じに盛り上がってきたね。それで、具体的にはなにをするんだい?」

イリス「まずはこれ。対戦型アクションゲーム『ストリートナイツ』! コントローラーで自分の代わりに剣士を動かして戦うのよ。操作方法は――」

 ――――操作に慣れてもらう必要があるため、少々お待ちください――――

ミーティア「オーケー。わかったわ。さあ、誰が相手でもこてんぱんにしちゃるっ!」

ファルカス「よし、じゃあまずはオレからだ! 勝負!」

ミーティア「上等! かかってきなさい!」

イリス「じゃあ、ゲームスタート!」

ミーティア「ていっ! たあっ! やあっ! このっ! うりうり!」

ファルカス「あっ、てめ、このっ! やられるかっ!」

黒江「うーん、これは、なんというか……」

イリス「見事なほど、ノーガードの殴り合い……というか、斬り合いになっちゃってるわねぇ。ガードとか使えばいいのに」

シルフィード「本当、両方のゲージがグングン減っていってるわね」

ルスティン「あのゲージが先にゼロになったほうが負け、でいいんだっけ?」

イリス「ええ、そうよ。ただ、このゲームにはちょっと特殊なルールがあって――」

ミーティア「ま、まずい、負ける! で、でやあ、このこのっ!」

黒江「おや、十字キーをガチャガチャやり始めたねぇ。あれが俗に言う『素人のガチャプレイ』」

ファルカス「よしっ! 純粋な反射神経勝負ではオレのほうに分がある! へへん! 無駄なあがきはよしときな!」

ルスティン「うわー、大人気なー……」

ミーティア「くううっ……! このこのぉっ!」

ミーティアの使用キャラ『我狼斬っ!』

ファルカスの使用キャラ『ううおっ! うぅぉっ! ぅぅぉっ……』

ミーティア&ファルカス「……え?」

黒江「おお、昔なつかしの『やられボイス』。男性キャラの敗北時には、全員、このボイスが適用されてたんだったね」

イリス「ガチャプレイから偶然、必殺技が出て勝利。初心者同士の戦いだと割と起こりやすいのよね、こういうこと」

ミーティア「ね、ねえねえ! なにいまの!?」

ルスティン「キャラにいくつか設定されてる、必殺技ってやつだろ? 説明書、ちゃんと読んだのかい?」

ミーティア「そりゃ、読んだけど。でも、あのコマンドを入れた覚えなかったんだけどなぁ……」

黒江「ガチャガチャやってるうちに偶然、コマンドが入力できてしまっていた。割とよくあることだよ」

ファルカス「ちょ! 納得いかねぇ! 普通にやってれば絶対オレが勝ってたのに!」

ミーティア「そういうファルカスだって必殺技使おうとしなかったじゃない。ほら、負け犬は次の人と代わった代わった」

ファルカス「く、くそう……!」

黒江「じゃあ、次は私がやるかな」

ミーティア「オーケー。今度は必殺技を狙って入力して、華麗に勝利してみせる!」

黒江「では、お手並み拝見」

ミーティア「試合開始っと! まずは小手調べに隙のできにくい小攻撃を――」

黒江「ほっ!」

ミーティア「うわっ! 上に蹴りとばされた!」

黒江「ほい、ほい、ほいっと!」

ミーティア「ちょっ! 反応しない! なにを入力しても反応してくれない!」

黒江「そりゃそうさ。ハメ技だもの」

ミーティア「ハメ技……? あっ! やっと地面に着地できると思ったのに、直前のところでまた蹴りあげられた!」

黒江「さらに、ほい、ほい、ほいっと!」

ミーティア「ゲージが! なにも行動できないままにゲージがどんどん減っていく! ちょっと、どうなってるのよ!」

イリス「諦めなさい、ミーティア。ハメ技にかかってしまった以上、あとは黒江が操作ミスすることを祈る以外、勝てる道はないわ」

ミーティア「そんなあ! そもそもハメ技ってなんなのよ!?」

イリス「ハメ技っていうのは……えっと、ちょっと待ってね。――『アーカーシャー』にアクセス!」

ファルカス「こんなことで!? もしかしてお前、本当は持ってる知識少ないんじゃないのか!?」

イリス「む、失礼ね。ただ単に、ゲームは私の専門分野じゃないってだけのことよ。で、ハメ技っていうのはね、『敵の攻撃方法を封じたりして、一方的に攻撃すること』よ。さっき言ったとおり、一度やられたら負けが確定するまで自分でキャラを動かせなくなるの。相手がミスしない限り、ね」

ミーティア「くううっ……! 悔しい! こんなのってあんまりすぎるわよ!」

黒江「はっはっはっ。ほい、ほいっと」

ファルカス「それにしても、あんたもよく鮮やかに連続で攻撃しまくれるよなぁ。ハメ技って、かなり難しそうに見えるんだが……。本当に初心者か? あんた?」

黒江「いや、なに。私くらい長く生きていればね、ゲームをやる機会もいくらかは巡ってくるのさ」

ファルカス「そういうもんかね。というか、あんたはどう見ても二十代前半だろうに……」

イリス「それに、私にはそういう機会、巡ってこなかったんだけどねぇ……」

黒江「はっはっは。さて、ほい、ほい、ほいっと。でもって――」

ミーティア「あ、攻撃がやんだ! もしかして操作ミスった!? よし、降りてこい降りてこい、まだゲージはゼロじゃないんだから、逆転のチャンスは残されてるはず……!」

黒江「いやいや、私の勝ちは動かないよ。――それっ!」

黒江の使用キャラ『明光斬っ!』

ミーティアの使用キャラ『ううおっ! うぅぉっ! ぅぅぉっ……』

ミーティア「負けたーっ! ってか、なにいまの!? 剣からビームが! 剣から放たれたビームが、地面に降り立つ直前のあたしのキャラを直撃して吹っ飛ばした!」

黒江「なんともスマートかつ鮮やかなパーフェクト勝利」

イリス「いえ、いまのは卑怯かつ大人気なかっただけだと思うわ」

ミーティア「くわぁぁぁぁぁっ!!」

イリス「ほら、ミーティアもマジでキレる五秒前って感じだし」

黒江「本当、勝負事となると熱くなるねぇ」

イリス「まったく……。よし、じゃあ今度は私がミーティアのリベンジを――って、あ、ルスティンとシルフィードが先にやる?」

ルスティン「アタシはいいよ。実際に身体を動かすほうがよさそうだ」

シルフィード「負けるとわかった戦いをするのも、ねぇ……」

イリス「そう、じゃあ私が。黒江、覚悟しなさい! ハメ技を警戒する私に隙はないわよ!」

黒江「いいだろう! だからといって簡単に負けはしないぞ!」

ミーティア「頑張れ、イリス! そして黒江を倒したあなたを制して、あたしがナンバーワンになる!」

ファルカス「おお、微妙に白熱してきたな」

ルスティン「まったくだ。たかがお遊びだっていうのに……」

イリス「さて、一撃は軽いけど、連続攻撃を得意とする二刀流キャラを選んで、と。――さあ、スタート!」

黒江「さて、まずは。――ほっ! ……む、やはりガードされるか。なら――」

黒江の使用キャラ『明光斬っ!』

ミーティア「あっ! ガードしたのにゲージが減った!」

イリス「ちょっとだけ、だけどね。必殺技はガードしてもゲージが減るものなのよ」

ミーティア「そ、そういうものなんだ……」

イリス「さて、こちらも身軽さと二刀流の利便さを駆使して近づいていって……」

イリスの使用キャラ『突・八百万(やおよろず)!』

黒江「むっ! しまった、猛ダッシュに捕まった!」

イリス「そこから連続で突きを浴びせる! それが『突・八百万』という必殺技よ! まあ、本当に八百万回も突くわけじゃないけどね。でも――」

黒江の使用キャラ『がはあぁぁっ……!』

黒江「なにっ!? 私のキャラが吐血して倒れた、だと……!」

イリス「ふっ、あまりに突然の敗北でキャラが変わったわね、黒江」

ミーティア「そういうイリスもキャラが変わってる気がするけどね……。でも、一体どうしてこんなに早く勝負がついたの? 黒江のキャラのゲージ、まだ八割近く残ってたのに……」

ファルカス「何発目かの突きを食らった瞬間、一気にゼロまでグーンと減ったよな……」

イリス「これが、ミーティアとファルカスがプレイしていたときに言いかけた『ちょっと特殊なルール』なのよ。得物が剣で、キャラが鎧を装備していない人間である以上、ごくごく低確率ではあるけれど、心臓に剣が届いて一撃死、という敗北パターンが用意されてるの。ちなみに、一撃死が起こる確率は、『斬り』や『薙ぎ』よりも『突き』のほうがわずかに高いわ」

ファルカス「……ああ、なるほど。よくよく考えてみれば当然のルールだよな。大体、何回斬られてもノーダメージのときとまったく同じ動きができるっていうほうがおかしいんだ」

イリス「まあ、それを言ったらミもフタもない気もするけどね。あと、一撃死のときは敗北ボイスも変わるわ」

ミーティア「ああ、さっきの『がはあぁぁっ……!』ってやつね」

黒江「しかし、なるほど。一撃死が起こる確率を少しでも高めるために、突きが得意な二刀流キャラを選んだわけか。なかなかに策士だね」

イリス「褒め言葉として受け取っておくわね。――さて、今度は誰がやるのかしら?」

ミーティア「当然、あたしが――」

ファルカス「いや! その一撃死のルールを知った以上、ここはオレの出番だろう! 『強運』持ちのオレなら、絶対に高い確率で一撃死が起こるはず!」

ミーティア「……はっ。」

ファルカス「なんだよ、そのバカにしたような笑い方は!」

ミーティア「バカにしたのよ! さっきあたしに負けたくせになに言ってんの!?」

ファルカス「なにおう! あのときはあのとき、いまはいまだ!」

イリス「ま、まあまあ。だったらミーティアとファルカスが対戦すればいいじゃない。私は見てるだけでも楽しいから」

ミーティア「本当!? ありがとう、イリス!」

ファルカス「助かるぜ! さあて、こてんぱんに叩きのめして泣かせてやる!」

ミーティア「こてんぱん、はあたしが最初にあなたと戦ったときに言ったセリフよ! そんなことも忘れたのかしら!」

イリス「――さて、ミーティアとファルカスが対戦を始めたところで。
    皆、今回の座談会は楽しんでもらえたかしら? 本当はピンク色のトカゲ『ジョッシー』が大活躍する『大乱闘! スマッシュシスターズ!』でチーム戦もやろうと思っていたんだけれど、残念、もうお別れの時間になっちゃったわ」

黒江「ドリフ風に言うなら、『お別れするのは辛いけど。時間だよ、仕方がない』というやつだね」

イリス「ええ。『次の回――もとい、『(座談)会』までごきげんよう』ってやつね。そんなわけで」

イリス&黒江「今年も、このブログにおつきあいいただければ幸いです!」

黒江「締めとしてはこんな感じかな」

イリス「こらこら。さっきのでちゃんと締めたんだから、そういうことは言わないの」

ミーティア「ああっ! 負けたっ!」

ファルカス「どうだ、オレの『強運』! ……って、痛いじゃないか! コントローラー投げつけるな!」

ミーティア「ふっふっふ……。ねえ、ファルカス。いみじくも、さっきのルスティンが言ったことと同じことをしましょうか」

ファルカス「ど、どういうことだ……?」

ミーティア「やっぱり、あたしたちにゲームは合わないと思うのよ。つまり、実際に身体を動かしましょうってこと!」

ファルカス「お、おい! ちょっと待――」

ミーティア「問答無用! ストレス全部ぶつけちゃるっ! 爆炎弾(フレア・キャノン)っ!!」

ファルカス「ううおっ! うぅぉっ! ぅぅぉっ……」

ミーティア「ふんっ! まだまだ余裕そうね! ならもう一発食らいなさい!」

ファルカス「ちょっと待てえぇぇぇぇっ!!」

イリス「あー……。なんだか、一番最初の頃の座談会のノリになってきちゃったわねぇ……」

黒江「初心に帰って、というやつだね」

イリス「違うと思うけど……」

ファルカス「こらっ! 本当、死ぬからやめろって!」

ミーティア「うるさいうるさいうるさーいっ!」

イリス「あ、あはは。ともあれ、じゃあ皆、またね!」



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